5 歴代受賞者 | ドコモ・モバイル・サイエンス賞 | 事業概要 | MCF - Mobile Communication Fund

事業概要 ドコモ・モバイル・サイエンス賞

第14回(2015年) ドコモ・モバイル・サイエンス賞 受賞者決定 2015年09月28日


先端技術部門

優秀賞  
国立研究開発法人情報通信研究機構
<グループ代表>
ユニバーサルコミュニケーション研究所
  情報分析研究室 室長 鳥澤 健太郎氏
   
 
耐災害ICT研究センター
  情報配信基盤研究室 室長 大竹 清敬氏
 
ユニバーサルコミュニケーション研究所
  情報分析研究室 研究マネージャー 橋本 力氏
 
  同 主任研究員 呉 鍾勲氏
  同 研究員 田仲 正弘氏、水野 淳太氏、Julien Kloetzer氏、川田 拓也氏
 
  同 専門研究員 後藤 淳氏(現日本放送協会)
 
ユニバーサルコミュニケーション研究所
  企画室 専門研究員 藤井 秀明氏
 
東北大学 大学院情報科学研究科
<グループ代表>
教授 乾 健太郎氏
 
 
准教授 岡崎 直観氏

応募業績 「ソーシャルテキストビッグデータの意味的分析技術の研究」

授賞理由 鳥澤氏らは、数10億ページにも及ぶWeb上の日本語テキストを利用して、様々な質問に回答する大規模Web情報分析システムWISDOM Xと、対災害SNS情報分析システムDISAANAを開発するとともに、誰もが利用できるようにWeb上で一般公開している。
WISDOM Xは、出来事間の因果関係、文間の同義や矛盾を認識する意味処理技術、仮説推論技術などを統合し、Web数10億ページを数百台の計算機で解析して、将来起こり得る出来事を尋ねる「どうなる?」型の質問、ものごとの理由を問う「なぜ?」型の質問を含め、様々な質問に回答するだけでなく、さらに仮説まで生成する世界初のシステムである。DISAANAは、WISDOM Xの技術を利用し、「帰宅難民はどこ?」という質問を入力すると、回答だけでなくデマ情報特定の支援も行う技術であり、スマートフォンでも利用可能である。
今後は、社会問題解決、研究開発プラン、観光旅行プランなど、さまざまな場面に活用できるよう、プランや仮説、リスク等が利用者の求める形でまとめられて提示される基盤となることが期待される。
乾氏らは、大規模言語データから広範な言語知識・世界知識を自動獲得し、この大規模知識データベース上での推論に耐える世界最高速の仮説推論方式を開発した。さらに、ネット情報の信頼性分析という重要課題に応用して、東日本大震災後のデマ・誤情報の大規模解析、農産物風評被害の大規模データ解析などに展開した。
仮説推論方式は整数線形計画法を応用した画期的なもので、これによって米国の従来システムより1万倍以上高速に動作する世界最高速の仮説推論システムを実現し、世界で初めて仮説推論の機械学習を実現した。これらはオープンソースとして公開されており、新規性・有用性とも高く評価できる。今後本技術の進展によりサイバー空間と実空間に対する人間の理解を支援し、テキストビッグデータの活用基盤に発展することが期待される。

基礎科学部門

優秀賞
東京工業大学
量子ナノエレクトロニクス研究センター
准教授 河野 行雄氏

応募業績 「ナノ構造を用いたテラヘルツ電磁波の画像化技術の開拓と応用」

授賞理由 河野氏は、半導体量子構造やカーボンナノチューブを用いて、従来よりも格段に高い性能を持つ高感度テラヘルツ検出・高解像度イメージング技術を開発した。また、これを電子材料・デバイス研究に応用して、半導体量子構造2次元電子系の空間ダイナミクスの解明や、グラフェン中ディラックフェルミオンのテラヘルツ電磁波共鳴の観測に成功した。
テラヘルツ電磁波の高感度検出と高解像度イメージングの可能性を示したことは、今後の技術開発のひとつの方向性を示したことになる。その成果は電子材料の分析など多方面への応用が期待されており、実際に河野氏自身が開発した顕微鏡により、半導体2次元系の現象解明にも貢献している。
筆頭での論文掲載も多く、2014年にはGottfried Wagener Prize (German Innovation Award)を受賞。国内外の学会での招待講演は60件を超え、学問的貢献は極めて高く、将来性や体系化も期待される。
テラヘルツ技術は、医療、産業、科学への幅広い応用が期待されている。その成果は、ドコモ・モバイル・サイエンス賞基礎科学部門の優秀賞にふさわしいと考えられる。

社会科学部門

奨励賞
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
新領域融合研究センター
融合プロジェクト特任研究員 一藤 裕氏

応募業績 「ソーシャル・ビッグデータを用いた観光・防災政策・意思決定支援社会システム」

授賞理由 災害復旧等の緊急時においては、政策決定をサポートするために、被害状況や復興度合い、復興スピード等の把握が課題となっていた。一藤氏は、大規模データとリアルタイム情報を駆使することにより、これまで不可能であった複雑要因の構造分析を可能とし、被災地での復旧状況を推定し可視化する意思決定支援システムを開発した。
また、平常時と緊急時の差分を評価するため、復興力評価指標(RI)を提案し、科学的根拠を持つデータに基づいた政策・意思決定の有用性を実証的に明らかにした点を評価したい。
災害等の緊急時に情報通信が果たす役割は極めて大きいが、先の東日本大震災では、緊急時にのみ利用されるシステムが、実際には運用できなかった例も多い。一藤氏が開発した、平常時の観光支援、緊急時の防災・災害政策支援を両立する社会システムの実現は、政府や自治体の緊急時の政策決定に重要な意味を持つ。
今後、こうした研究成果を社会的に活用できれば、政策的意思決定のみならず、企業や教育等、多面的なイノベーションが期待される。

◆選考委員
【委員長】(敬称略)
羽鳥 光俊 東京大学 名誉教授
   
【委員】(敬称略/五十音順)
青山 友紀 慶應義塾大学理工学部 訪問教授
伊藤 元重 東京大学大学院経済学研究科 教授
餌取 章男 東京工科大学メディア学部 客員教授
坂内 正夫 国立研究開発法人情報通信研究機構 理事長
残間 里江子 株式会社キャンディッド・コミュニケーションズ 代表取締役会長
須藤 修 東京大学大学院情報学環 教授
藤本 浩志 早稲田大学人間科学学術院 教授
     
寺﨑 明 株式会社NTTドコモ 代表取締役副社長
尾上 誠蔵 株式会社NTTドコモ 取締役常務執行役員 R&Dイノベーション本部長

 

第13回(2014年) ドコモ・モバイル・サイエンス賞 受賞者決定 2014年10月03日


先端技術部門

優秀賞 越前 功(エチゼン イサオ)氏  国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 教授

応募業績 「サイバーとフィジカルの境界におけるセキュリティ・プライバシー保護技術の研究開発」

授賞理由 スマホやタブレット等、高機能なモバイル端末の普及により、サイバー空間とフィジカル空間にまたがる領域で発生するセキュリティやプライバシーの問題の解決が重要な課題となっている。 越前氏は、この問題にいち早く取り組み、人間の視覚とデバイスの感度の違いを利用して画面の盗撮による著作権侵害や情報漏えいを防止する技術、および人物映像のプライバシー保護技術を、世界で初めて開発した。
盗撮防止技術や人物映像のプライバシー保護技術は実用化に向けて開発が進められており、人物映像のプライバシー保護については眼鏡メーカーとの共同開発により、2014年中の製品化が見込まれている。
人間の視覚と撮像デバイスの分光感度特性の違いを明確化し、盗撮防止、顔検出無効化などの応用を含め多数の論文を発表して多くの賞を受賞するなど、学問的な貢献も大きい。
今後の社会では、高機能なモバイルデバイスに仕事や日常生活が依存する度合いがますます増大すると予想される。本技術が実用化され、そのマイナス面を防止することが可能となれば、社会へのインパクトは大変大きいと期待される。その成果は、ドコモ・モバイル・サイエンス賞 先端技術部門の優秀賞にふさわしいと考えられる。

基礎科学部門

優秀賞 小野 輝男(オノ テルオ)氏  京都大学 化学研究所 教授

応募業績 「ナノ磁性体を用いた新規スピンデバイスの基礎と応用展開」

授賞理由 小野氏は、強磁性細線中の磁壁を電流で動かして、磁性細線の磁化状態を制御する技術を開発。また、強磁性円盤に存在する磁気コアの向きを電流によって制御する技術を開発した。これにより、従来は磁場によって制御されてきた磁気デバイスの磁化の向きを、電流のみで制御するというスピンデバイスの新たな基盤技術を、世界に先駆けて構築した。
「強磁性細線中の磁壁を電流で移動制御する技術」は、IBMが磁性細線中に情報となる磁壁を多数導入して電流で動かす機構の新しいストレージを提案するなど、世界的に大きなインパクトを与えた。また、「円盤状磁石に存在する磁気コアの向きを電流によって制御する技術」は、学術雑誌Nature Materialsの表紙に掲載されるなど、学術的にも注目されている。本研究の2つの業績の端緒となった論文の引用数は極めて多く、学問的貢献は大きい。
電流による磁化制御技術は素子を微細化するとともに必要な電流を減少させるため、研究がさらに進展すれば、モバイルデバイスやウエアラブルデバイスに必要な電力削減や高速なナノデバイスの開発が期待される。その成果は、ドコモ・モバイル・サイエンス賞基礎科学部門の優秀賞にふさわしいと考えられる。

社会科学部門

奨励賞
<グループ代表>
鳥居 健太郎(トリイ ケンタロウ)氏
 株式会社東芝 ヘルスケア社 参事
 
山本 高敬(ヤマモト タカノリ)氏
 株式会社東芝 研究開発センター 研究主務

応募業績 「音声つぶやきによる医療・介護サービス空間のコミュニケーション革新に関する研究」

授賞理由 鳥居氏らは、独立行政法人科学技術振興機構の社会技術研究開発センターによる問題解決型サービス科学研究プログラムのもと、音声つぶやきとテキストマイニングを利用し、記録や双方向の情報共有を実現するコミュニケーションシステムを開発した。スタッフはヘッドセットを着用してつぶやくだけで、システムが自動的に発話中の単語や位置などをタグとして音声とともに記録し、適切な範囲の職員に配信する。これにより、手がふさがりがちなケア中にも記録と連絡の両方が可能となり、介護施設における実験では、従来は記録されずに見過ごされてきた細かな記録が補足され、ケアの改善に役立つことが確認されている。また、つぶやきの配信により、他職員の状況把握や応援依頼も可能となった点も評価したい。
このシステムが社会に普及すれば、医療・介護現場で必要とされている多職種間情報連携への貢献が期待されるだけでなく、「安心・安全」を必須要件とする設備保守等さまざまな分野への活用、応用が期待できることから、社会的インパクトは大きいと考えられる。

奨励賞 田中 優子 (タナカ ユウコ)氏  大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 特任研究員

応募業績 「群衆の批判的思考を活用するICTデザインの認知科学的研究」

授賞理由 災害等の緊急時に情報通信が果たす役割は極めて大きい。先の東日本大震災では、不特定多数の一般ユーザーが発信する情報によって多くの人命が守られた一方、デマや風評が拡散し社会的混乱を招いた。田中氏は、情報提示順序を工夫し、他者の批判的思考を先に提示することで、後続のデマへの心理的評価が低下し、デマの拡散行動が抑制できることを実証的に明らかにした。実際に東日本大震災時にSNS上で伝播したデマを用いて、通常のデザインの場合とデマを低下させるICTデザインの場合のデマの拡散行動を比較分析し、流通する情報の質を高める上でICTデザインが大きく寄与できる可能性を示した点を評価したい。
情報の信頼性を確保する科学的方法論が確立されれば、風評等の社会問題解決への貢献が期待される。また、批判的思考を活用するICTデザインを、クラウドから創造的発想を抽出する手法として応用・開発したクラウドソーシング・システムは、商用化への取り組みもなされていることから、ビジネスへの貢献が期待される。

第12回(2013年) ドコモ・モバイル・サイエンス賞 受賞者決定 2013年10月02日


先端技術部門

優秀賞
<グループ代表>
高木 剛(タカギ ツヨシ)氏
 九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所 教授
下山 武司(シモヤマ タケシ)氏
 株式会社富士通研究所 主任研究員
篠原 直行(シノハラ ナオユキ)氏
 独立行政法人情報通信研究機構 研究員
林 卓也(ハヤシ タクヤ)氏
 九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所 学術研究員

応募業績 「秘匿データを利活用できる次世代暗号技術の実用化への道を拓く先駆的研究」

授賞理由 高木氏を中心とするグループ4名は、各人の専門である暗号理論、解読技術、整数論、計算機プログラミングを結集することで、解読に数十万年かかると見積もられていた923ビットのペアリング暗号を、わずか148日で解読するという世界記録を樹立するとともに、これらの安全性評価の研究に基づき、以後20年は安全なペアリング暗号の実用化への道を拓いた。
ペアリング暗号が実用化されれば、ユーザは自身のメールアドレスなどのIDを使って暗号化ができるだけでなく、暗号化されたままのデータの検索が行えるなど、クラウド型情報サービスの安全性と利便性向上、サービスの多様化が期待される。
メンバー各人が暗号実装の国際会議CHES2011など世界最高レベルのプログラム委員長、我が国の暗号標準化活動であるCRYPTRECの委員を務めるなど、国内外の暗号標準化活動や、標準化ならびに学術分野の発展にも貢献している。その成果は、ドコモ・モバイル・サイエンス賞 先端技術部門の優秀賞にふさわしいと考えられる。

基礎科学部門

優秀賞 平山 秀樹(ヒラヤマ ヒデキ)氏  独立行政法人理化学研究所 主任研究員

応募業績 「高品質AlGaN系半導体の結晶成長技術の開発と深紫外線LEDの先駆的研究」

授賞理由 波長が220-350nmの深紫外LED(発光ダイオード)、半導体レーザは、殺菌や皮膚治療等の医療、高密度光記録レーザ、公害物質の高速分解・浄水、長寿命蛍光灯等の照明など、幅広い分野での応用が考えられ、その実現が強く期待されてきた。
平山氏は、深紫外発光素子を実現する上で最も有望な材料系であるAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)系混晶半導体の結晶成長技術の開発を主導し、世界に先駆けて短波長・高効率な深紫外LEDを実現した。 
具体的には、(1)サファイア基盤とAlGaN発光層の間に高品質なAlNバッファー層を設けることによる内部量子効率の飛躍的向上(2)多重量子障壁の導入による電子注入効率の改善(3)AlGaNへのIn(インジウム)混入効果によるホール濃度の改善(4)実用レベル高出力LEDの実現である。
学問的貢献も大きく、開発した技術を140件以上の原著論文として発表するとともに、国内外で関連特許120件以上を申請。その成果は、ドコモ・モバイル・サイエンス賞 基礎科学部門の優秀賞にふさわしいと考えられる。

社会科学部門

奨励賞 松尾 豊(マツオ ユタカ)氏  東京大学  准教授

応募業績 「ウェブマイニングによる社会観測とその活用に関する研究」

授賞理由 自然言語処理や人工知能の学術分野では、意味理解の研究が長年行われてきた。たとえば、ブログ投稿内容の解析などが試みられてきた。松尾氏は、Twitterなど時々刻々発信される膨大な情報を活用して、人物を対象とした関係抽出技術やソーシャル・メディアから知識を取得する手法を開発した。そして、選挙予測、株式市場の分析・予測、さらには地震発生検知など、意思決定、予測、予防を視野に入れた新しい価値を提供する独創的なサービスを生み出した。
人工知能学会が支援した“SPYSEE”は、広く社会でも認められている。松尾氏は、2007年以降20件を超えるJournal論文を発表。ソーシャル・メディアからの社会的動向の観測に関する研究として、「ソーシャルセンサ」という概念を提案して注目されている。Twitterから地震の発生とその震源地を特定する技術を確立した論文は、3年間で550回以上の引用回数を得て、国際的にも大きく注目され、学術的貢献を果たしている。
ウェブ上の情報を活用した社会分析、社会問題解決、個人や地域の問題解決などは今後の重要な研究テーマであり、実用化への取り組みもなされていることから、ビジネスへの貢献が期待される。

奨励賞 Loo Geok PEE (ルー ギョク ピー)氏  東京工業大学  助教

応募業績 「ナレッジ・マネジメントにおけるICTとモバイル・メディアの利活用と有効性に関する実証研究」

授賞理由 ナレッジ・マネジメントは、知識社会の進展に重要な意義をもつが、モバイル・メディアなどのICTが及ぼす変化に着目した研究は、これまでほとんど見られなかった。PEE氏は、民間企業と公共団体において、ナレッジ・マネジメント導入の効果を阻害する要因の違いに着目して仮説を立て、多数の「組織」調査にもとづいて実証的に比較分析した。
方法として、影響を与える諸要因あるいは要素を仮説として挙げ、それらの要素に関連した設問を設定し、対象となる組織と団体に対して実施し、結果を分析して、プラス、マイナスの要因となり得る要素が何であるかを検証している。潜在的な利用者が、何を懸念し、何を許容できるかを明確にして、リスクの負の影響を軽減することに結びつけようとしている。利用者の感覚とも乖離しない調査結果を、説得的に提示している。
組織の形態や構造が異なれば、利活用も異なるのは当然であり、民間企業、公共団体、グループ、個人においてのナレッジ・マネジメントの促進についての示唆は大きい。ナレッジ・マネジメント分野がより一般化・汎用化されることに貢献するものと考えられる。また、ICT利活用の有効性が示されたことによって、より効果的な手法、ICTによるナレッジ・マネジメント手法の提案や開発を促進し、技術分野と人文・社会科学のどちらにも大きく寄与する発展が期待される。

第11回(2012年) ドコモ・モバイル・サイエンス賞 受賞者 2012年09月20日


先端技術部門

優秀賞 京都大学 学術情報メディアセンター 教授
河原 達也(カワハラ タツヤ)氏

応募業績 「話し言葉の音声認識に関する研究開発」

授賞理由 河原氏は、現在研究機関において最も一般的に使われているオープンソースの音声認識ソフトウェアJuliusの設計・開発・普及に主導的な役割を果たすとともに、世界初となる音声認識を用いた会議録作成システムの国会(衆議院)への導入に貢献した。
Juliusは国内の研究機関では音声認識ソフトのデファクト的存在で、国外でも広く使われ、企業もベンチマーク対象にするものであり、類似のものは他にないと思われる。
また、衆議院の会議録作成のための音声認識システムは、人間同士の討論を対象にしている点で、従来の人間対機械(携帯電話、カーナビ、ロボット等)での音声認識よりレベルが高いものである。諸外国を含めて実際に国会に導入された事例は他になく、明治以来の手書き速記制度を転換したという点では、社会の変化、進歩に貢献したと言える。今後、字幕を付与できるレベルにまで音声認識技術が発展すれば、聴覚障害者や高齢者、外国人に対する情報保障の手段として期待される。
音声認識に関するトップレベルの国際会議(IEEE ASRU)を日本に誘致するなどの貢献も認められ、その成果は、ドコモ・モバイル・サイエンス賞先端技術部門の優秀賞にふさわしいと考えられる。

基礎科学部門

優秀賞 東北大学 原子分子材料科学高等研究機構 教授、
東北大学 金属材料研究所 教授、兼 日本原子力研究開発機構 客員グループリーダー
齊藤 英治(サイトウ エイジ)氏

応募業績 「スピン流の基本現象の発見とスピン流物理の構築」

授賞理由 齊藤氏は、「逆スピンホール効果」の発見によって、これまで困難であったスピン流検出を可能とした。また、絶縁体であるにもかかわらず、スピン流を伝導する物質群である「スピン伝導絶縁体」、全く新しい発電原理である「スピンゼーベック効果」を発見するなど、スピン流に関する基本現象を次々に発見・解明することでスピン流基礎科学を構築した。
スピン流の検出原理を発見し確立したことは、その後の世界のスピン流科学の原点となっている。また、齊藤氏自身がその後の研究によりスピン流基礎科学の学問形成を主導。発見したスピンゼーベック効果を活かした環境発電(エナジーハーベスティング)等の応用研究開発が行われている。
齊藤氏がNatureをはじめとする論文誌に発表した主要成果は、5年間で77件に上り、国際純粋・応用物理学連合(IUPAP)の若手科学者賞、日本IBM科学賞、日本学士院学術奨励賞、日本学術振興会賞などを受賞している。
スピン流の基礎科学は電磁気学の新たな法則と位置づけられる。学問的貢献、体系化、が多いに認められ、将来性もあると思われる。その成果は、ドコモ・モバイル・サイエンス賞基礎科学部門の優秀賞にふさわしいと考えられる。

社会科学部門

奨励賞 国立情報学研究所 情報社会相関研究系 准教授
岡田 仁志(オカダ ヒトシ)氏

応募業績 「電子商取引および電子決済の消費者受容行動に関する研究」

授賞理由 岡田氏は、ネット・ビジネスにおけるユーザーの受容行動調査にコンジョイント分析の手法を取り入れ、電子決済・電子商取引における利便性と不安要素のトレード・オフ効用関数をモデル化した。
コンジョイント方式を用いた調査・分析については、先行研究でその有効性が実証されているが、電子決済・電子商取引についてのコンジョイント分析は、これまでなかったものである。岡田氏は、電子商取引における消費者の行動が、電子商取引の成熟度や文化、国民性、法制度などの影響を受けることを、東アジアや東南アジアの研究者を中心に構築した国際共同調査により実証し、消費者受容行動に理論モデルを確立した。
岡田氏が提案したトレード・オフ効用関数モデルは、一般化された説明モデルとして学術書に掲載されるなど、広く認知、評価されており、学術的貢献も認められる。

奨励賞 独立行政法人情報通信研究機構
ユニバーサルコミュニケーション研究所
〈グループ代表〉
音声コミュニケーション研究室長 柏岡 秀紀(カシオカ ヒデキ)氏
ユニバーサルコミュニケーション研究所所長 木俵 豊(キダワラ ユタカ)氏
同主任研究員 堀 智織(ホリ チオリ)氏
同研究員 翠 輝久(ミス テルヒサ)氏

応募業績 「モバイル音声対話処理システム(AssisTra:京都観光コンシェルジュ)の開発」

授賞理由 柏岡氏を代表とするグループ4名は、音声認識、音声合成を中核とする音声対話処理に必要な高度な技術を結集し、モバイル端末からの双方向対話システムを開発した。
柏岡氏らが、利用者の広範囲な情報要求に的確かつ迅速に応えるため、認識語彙数を標準的な数千語彙から数百万語彙へと飛躍的に増大させ、高度な音声対話処理システムをベースに、京都観光コンシェルジュ・システムを構築した点を高く評価したい。
現在、一般に利用可能なsiriや「しゃべってコンシェル」などの音声対話処理システムが、利用者の短く簡潔な情報要求に応える機能であるのに対し、柏岡氏らのシステムでは、より複雑な情報要求にも対応可能な高度な機能の実現が可能となっている。また、現行のシステムに先駆けて、早期から音声対話システムを実働させた点も評価すべきと考える。柏岡氏らは研究をさらに進めて、多数のユーザーによる利用実験を行ない、ユーザーの知識度、選好度などを統計的に処理し、それらがシステムとの相互作用を通じて変化するプロセスをマルコフ過程として説明し、「ユーザー・モデル」を仮構してみせた。また、メンバーそれぞれが研究成果を学会や行政関連委員会などで活発に報告・活動しており、今後の進展によって、さまざまなデバイスへの導入が期待される。

第10回(2011年) ドコモ・モバイル・サイエンス賞 受賞者 2011年09月22日


先端技術部門

優秀賞 NHK放送技術研究所 研究企画部 チーフ・エンジニア
小川 一人(オガワ カズト)氏

応募業績 「著作権保護と利用者の利便性を両立させるコンテンツ流通用セキュリティ技術の開発」

授賞理由 小川氏は、コンテンツ配信に必要となる著作権保護技術に関し、処理能力に限界があるモバイル端末でも利用可能な、利用者が持つ秘密鍵に利用者を特定できる機能を付加することで秘密鍵の不正利用を抑止する安全な暗号方式、さらに、秘密鍵から有効期限付きの一時的な秘密鍵を生成し利用者の責任で配布できる利便性の高い機能を持つ暗号方式を開発した。理論的には、離散対数問題と多次元多項式問題を数学的に合成し、公開鍵暗号機能に不正利用者追跡機能を付加した一つの暗号方式を発案した。また、不正利用者を追跡できる確率の理論限界を求め、その限界に近い能力を有する符号を開発した。さらに、理論的研究や符号の提案だけでなく、その実現性を示すため、特定アプリケーションで実装し、実現可能性を示した。これにより、モバイル端末によるデジタルコンテンツの円滑な配信サービスの普及が加速する可能性が期待される。2008年に電子情報通信学会論文賞を受賞するなど学問的貢献も認められ、その成果は、ドコモ・モバイル・サイエンス賞先端技術部門の優秀賞にふさわしいと考えられる。

基礎科学部門

優秀賞 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 准教授
猿渡 洋(サルワタリ ヒロシ)氏

応募業績 「ブラインド音源分離に基づく自律的な音声情報通信インターフェイスの先駆的研究」

授賞理由 猿渡氏は、本来統計解析の理論であった独立成分解析(ICA)と空間音響学の関連を、世界で初めて明確化した。ICAの数理物理的な動作原理を解明して、極めて歪みが少ないICAアルゴリズムを提案し、音の空間情報を保持したまま各音源を分離抽出することに成功。 汎用のDSP上で動作するリアルタイムブラインド音源分離モジュールを開発した。具体的には、音の種類や位置、音響空間等に関する一切の事前情報がない状態において、マイクで観測される混合信号のみから個々の音源信号を分離抽出することに成功した。これにより、世界に先駆けてICAの実用化・商品化に成功し、2008年には警察備品に採用された。また、国際・国内会議発表や招待講演が多数あり、論文誌への論文も、5年間で29件に上る。電子情報通信学会論文賞、IEEE IROS2005のBest Application Paper Award、IEEE MLSP2007の世界音源分離コンテスト一等賞など各種学会の論文賞やその他の受賞も多く、学問的貢献も大きい。その成果は、ドコモ・モバイル・サイエンス賞基礎科学部門の優秀賞にふさわしいと考えられる。

社会科学部門

奨励賞 筑波大学 大学院図書館情報メディア研究科 准教授
石井 夏生利(イシイ カオリ)氏

応募業績 「プライバシー・個人情報保護法に関する総合的研究」

授賞理由 石井氏の業績は、日本における個人情報保護法の現状と将来展望について、背景となるプライバシー権の歴史的変遷と、英米での判例法的展開を詳細に検討した大部の著作(2008年)、および、その後今日までの論文7篇を含む労作である。個人情報保護法の制定に向けては、高度情報化社会におけるさまざまな個別事象にも着目し、検討していく必要があるが、受賞者は、国際的な動向を考察し、グローバル・スタンダードを考慮している。とくにその立法過程を重視することによって、現実的課題解決に取り組んでいる点は高く評価できる。従来、法律学者の研究は、すでに制定された法律の解釈および判例の収集と検討を中心にしてきたように思われるが、受賞者は、現に流動している事象についての立法過程そのものを扱っている。従来からの法解釈や判例分析の枠を超えて、立法に至る関連主体間のダイナミックな関係や技術的問題の提起など、法の成立過程に集中するのは新しい試みである。著書刊行後から今日まで次々と生起し、またクローズアップされた諸問題についても、つねに一貫して法学的検討を加えている努力も評価したい。

奨励賞 大阪市立大学 大学院法学研究科 特別研究員
和久井 理子(ワクイ マサコ)氏

応募業績 「情報通信分野における標準化と知的財産をめぐる法政策」

授賞理由 和久井氏は、最近クローズアップされている「技術標準」をテーマとして、まず「標準」と「標準化活動」を区別する。そこに作用するさまざまな法規制、つまり、情報法、独占禁止法、知的財産法、国際取引法など、事業者に対する規制、情報通信規制のあり方に関する法的問題について、日米欧の豊富な事例をもとに、学際的な視点から整理している。 また、必須特許とライセンス拒絶規制、標準化機関の特許等取扱方針、パテントプールなどのトピックについて、日米欧それぞれの法的取り扱いの根拠や適用例について、実証的アプローチでまとめた労作である。この研究書は、国際的に事業を行う企業が、それぞれの国で特許に関してどのような戦略を取るべきかの指針として利用することができる基準的参考書となるであろう。ただし、昨今の「無償ライセンス化」を方針とするネット上のプラットフォーム・ビジネスなどへの消極的姿勢は惜しまれる。

第9回(2010年) ドコモ・モバイル・サイエンス賞 受賞者 2010年09月30日


先端技術部門

優秀賞 京都大学 大学院情報学研究科 教授
黒橋 禎夫(クロハシ サダオ)氏

応募業績 大規模コーパスの利用による
自然言語処理と情報検索の高度化に関する研究

授賞理由 述語と名詞の関係を精度よく認識する構文解析手法、自然文解析による複雑・高度な情報検索手法、Web上の情報を整理分析するシステム、などを開発した。日本語の特徴である長い節を効率的に処理できる手法に着眼し、Webから抽出した16億の日本語文から生成した大規模コーパスを用いて統計ベースの構文解析手法を実現した。
また、開放型検索エンジン基盤TSUBAKIを開発、情報爆発プロジェクトの研究システムとして運用している。言語処理学会の論文賞を4回受賞するなど学問的貢献は大きい。さらに船井情報科学会振興賞、IBM Faculty Awardsを受賞するなど、その研究に対する評価は高い。その成果は、ドコモ・モバイル・サイエンス賞先端技術部門の優秀賞にふさわしいと考えられる。

基礎科学部門

優秀賞 東京大学 大学院工学系研究科 教授
染谷 隆夫(ソメヤ タカオ)氏

応募業績 有機トランジスタの基礎研究と
フレキシブルエレクトロニクスへの応用

授賞理由 有機半導体の「大面積化の容易さ」と「曲げやすさ」という特長を保ちつつ、伝導特性を飛躍的に高める新技術を開拓。電子人工皮膚やワイヤレス電力伝送シートなどの新シート型デバイスを有機トランジスタで実現した。加えて、有機トランジスタと電子機能性材料を集積化する新手法を開拓し、新たな応用分野を拓いた。論文発表も多く、2009年には、IEEE Transactions on Electron Devicesに掲載された論文のうち毎年1編に与えられる最優秀論文賞を受賞。2009年にはデバイス関連最高権威学会IEDMにて基調講演を行うなど、学問的貢献の大きさは明らかである。その研究成果は、人間との親和性の高い新しいフレキシブルエレクトロニクスの分野を創造し、無機半導体とは異なる特徴を有する様々な応用が期待され、ドコモ・モバイル・サイエンス賞 基礎科学部門の優秀賞にふさわしいと考えられる。

社会科学部門

奨励賞 国立情報学研究所 情報社会相関研究系 助教
小林 哲郎(コバヤシ テツロウ)氏

応募業績 情報通信技術と社会的寛容性に関する社会心理学的実証研究

授賞理由 価値観の多様化と異質化、孤立化の進む社会におけるICT利用の効果について、実証的な社会調査データや被験者実験、計算機シミュレーションを用いて検証し、どのようなICT利用が、異質な他者との協力関係を促進し、「寛容な社会」基盤として機能するのかを解析した。理論的仮説を設定して、「社会的寛容性」「同質性」「異質性」などの概念を明確化し、測定可能な形に変数化し、社会心理学の調査分析技法を駆使して成果をあげている。社会心理学分野における実証研究の好例として評価できる。 また、ICTの更なる拡大・発展やケータイあるいはソーシャル・メディアの発達・普及が、今後の社会制度とコミュニケーション・パターンに与えるインパクトについての展望も与えている。従来の諸論文を理論的に整理して、一書にまとめた功績を評価する。

奨励賞 九州大学 大学院経済学研究院 教授
篠﨑 彰彦(シノザキ アキヒコ)氏

応募業績 情報通信技術導入の経済効果に関する実証研究

授賞理由 ICTの導入が日本企業の生産性にどのような影響を及ぼしているのかを、成長会計モデルや生産関数モデルのマクロ実証分析により明らかにした。精密で手堅い統計手法や分析結果は、今後の企業変革の方向と、さらなるICT 導入のための重要な立脚点になると思われる。ICTへの投資は、先進社会では日本が一番成長率が低く、投資効果が十分ではないというのが通説であるが、それを堅実な計量経済学の手法で実証してみせた。今後の国際比較研究や、将来に向けた政策提言に期待したい。

第8回(2009年) ドコモ・モバイル・サイエンス賞 受賞者 2009年09月29日


先端技術部門

優秀賞 東京大学 先端科学技術研究センター 教授
森川 博之(モリカワ ヒロユキ)氏

応募業績 ユビキタスネットワークに関する先駆的研究
~センサ/モバイル/光ネットワーク基盤の構築~

授賞理由 実社会と仮想社会を結びつけるセンサネットワークに注目し、センサデータからユーザのコンテキストを推定し、ユーザに有効なサービスを提供するコンテキストアウェアーサービスの先駆的研究を推進した。具体的にはセンサ屋内測位システム、無給電無線センサデバイス、地震モニタリングシステムなどの実証実験を含めた開発を推進した。
また、ユビキタスコンピューティングが注目される以前から実社会と仮想社会の統合を目指す研究に着手し、未来開拓プロジェクトや総務省ユビキタスネットワーク受託プロジェクトの中心研究者の一人として、産学連携でユビキタスネットワークの先駆的研究を先導し、ユビキタス社会を構築する基盤技術の研究を推進した。
さらに多数の論文や国際会議発表、大学院生の指導育成など学問的貢献も大きい。

基礎科学部門

優秀賞 国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 准教授
定兼 邦彦(サダカネ クニヒコ)氏

応募業績 透過的データ圧縮法の開発

授賞理由 従来のデータ圧縮法に存在した2つのトレードオフ、圧縮率と復元速度に対して新たな提案を行い、データを圧縮したまま解凍せずに高速処理できるよう構造化する技術を開発した。具体的にはデータ列をその圧縮率の限界であるエントロピーまで圧縮しつつ、圧縮データの任意箇所の1ワードを定数時間で復元する透過的データ圧縮法を開発した。これにより、ゲノム配列に用いられるデータ構造を従来比10分の1に圧縮することにも成功し、ヒトゲノム解析にも寄与した。この透過的データ圧縮法は、情報爆発時代における大規模大量データ処理の飛躍的高速化を実現した技術として世界中の研究者に衝撃を与え、国際学術論文の引用も多い。
また、文部科学大臣若手科学者賞、IBM科学賞、船井情報科学奨励賞を受賞するなど学問的貢献も大きい。

社会科学部門

優秀賞 株式会社情報通信総合研究所 上席主任研究員
小向 太郎(コムカイ タロウ)氏

応募業績 情報通信法に関する研究
~通信と放送の融合をめぐる法的枠組みの探求と提言~

授賞理由 1990年代後半からデジタル・ネットワークの急速な発展・普及により、通信と放送をめぐる技術的前提が大きく変貌し、従来別個の法制度とされてきた問題に早急な整備・再体系化が要請されていた。本研究では、自由を制約する規制を最小限にしつつ、通信と放送のよりよき協同と新しい秩序を実現するために、体系的にバランスのとれた見識と関連課題への対方法をも併せて提案している。
また、情報流通に関する法的問題を広範に捉えており、着眼点、問題意識に加えて膨大な調査分析と提言が盛り込まれている。
さらに総合的法体系の可能性を示したのみならず、放送と通信の融合が進むなか、新しい方向性とより有効な対処法を示唆的、制度的枠組みで提案している。

第7回(2008年) ドコモ・モバイル・サイエンス賞 受賞者 2008年10月17日


先端技術部門

優秀賞 北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授
宮地 充子 (ミヤジ アツコ) 氏

業 績 安全・安心を実現する楕円曲線暗号に関する研究

概 要 公開鍵暗号の一種である楕円曲線暗号を利用した階層型IDベース暗号を提案し、それが放送に適用可能であることを示した。
また、ICカード上のすべての攻撃に対して安全かつ効率的な楕円曲線暗号を提案し、効率的なセキュリティ技術を提案するだけでなく、商品化にも貢献した。
また、提案した楕円曲線暗号の実装方式がISO/IEC国際規格の一部に採用され、日本の情報セキュリティ技術の国際地位向上、国際標準化にも貢献した。

基礎科学部門

優秀賞 東北大学 多元物質科学研究所 教授
秩父 重英 (チチブ シゲフサ) 氏

業 績 非視認通信および表示・照明用Ⅲ族窒化物半導体の物性研究

概 要 1993年に開発されていた青色LEDの高効率発光のメカニズムについて、1996年に新たに「局在励起子発光 モデル」を提案し、窒化インジウムガリウム(InGaN)のLEDがなぜ結晶内の転位密度が大きくても強い発光を呈するかを解明した。
さらに窒化物半導体に特有な分極電場効果と励起子局在効果を定量的に説明する研究を推進し、有力誌に発表するなど、独創的な成果をあげた。
また、窒化ガリウム半導体デバイスは低消費電力の特長から、環境にやさしいシステムの実現に大きな貢献が期待されており、青色LEDの理論面で大きなインパクトを与える業績を上げた。

社会科学部門

奨励賞1 株式会社博報堂イノベーション・ラボ 上席研究員
(グループ名)植田研究室 価値転換現象研究チーム
<代表者> 鷲田 祐一(ワシダ ユウイチ)氏

業 績 普及過程における情報伝播ネットワークの不均一性と価値転換現象の構造分析
―需要側が牽引するイノベーションの可能性―

概 要 ハイテク製品の普及過程の解明と「価値転換現象」により、需要サイドからイノベーションが発生するメカニズムを明らかにした。従来の普及過程論を修正し、さらにネットワーク論と組み合わせて新しいモデルを提示している点を評価した。
また、需要サイドから供給サイドへの影響力を正当に評価し、両者の相互作用から、イノベーションが生ずることを理論化し、かつ実証した成果は大きく、携帯電話を例に実証した点にも注目した。

奨励賞2 駒澤大学 グローバル・メディア・スタディーズ学部 准教授
西岡 洋子 (ニシオカ ヨウコ) 氏

業 績 国際電気通信市場における制度形成と変化
―腕木通信からインターネット・ガバナンスまで―

概 要 国際電気通信の発展と変容の過程と方向性を、比較制度論の立場から歴史的に明らかにした。
歴史研究として、過去の資料を的確に収集し、まとめている点を評価した。
こうした研究は、後々の研究のための基準ベースとして役立つものと考えられる。

第6回(2007年) ドコモ・モバイル・サイエンス賞 受賞者 2007年10月19日


先端技術部門

優秀賞 株式会社 国際電気通信基礎技術研究所 執行役員
音声言語コミュニケーション研究所 所長
中村 哲 (ナカムラ サトシ) 氏

業 績 音声翻訳システムの研究開発

概 要 モバイル環境で利用可能なコーパスベース音声翻訳手法を用いて携帯端末用日英・日中翻訳システムを世界で初めて実現した。
旅行会話に限定した単語が、日英辞書100万語、日中辞書50万語を整備するとともにノイズ耐性が高いシステムであり、単語認識率は、90%である。
端末としては、PDAを用いネットワークを介した翻訳には数秒かかるものの日英翻訳のレベルは、TOEIC600点と実用レベルに達している。
また、2008年の北京オリンピックに合わせて、約1万台規模の実証実験を計画している。

基礎科学部門

優秀賞 独立行政法人 産業技術総合研究所 主任研究員
後藤 真孝 (ゴトウ マサタカ) 氏

業 績 計算機による音楽・音声理解とそれに基づくインタフェースに関する研究

概 要 音楽音響信号を人間のように理解できる計算機システムを実現した。
ビート、メロディ、サビを自動推定する音響信号処理手法を開発し、音楽をより能動的に聴くためにサビ出し機能及び楽曲構造を視覚化する機能を搭載した音楽再生インタフェースを実現するとともに音楽をブラウジングすることを可能とした。
また、学術研究用著作権処理済みの33ジャンル、全315曲を含む大規模音楽データーベースの構築をリーダとして推進し、広く一般に公開するとともに音楽音響技術の研究に貢献した。

社会科学部門

奨励賞1 京都大学大学院 経済学研究科 教授
依田 高典 (イダ タカノリ) 氏

業 績 携帯電話を含む日本のブロードバンド・サービス需要の計量経済分析と競争政策の研究

概 要 離散選択モデル分析というミクロ計量経済学の手法を用いてブロードバンドから携帯電話までの動向を分析した。
計量経済学の手法を効果的に活用し、携帯電話の選択について同じ事業者間の需要代替性が強いという点を示した。
なお、番号ポータビリティ導入以前の分析結果であるが、統計的手法を有効に活用した理論的条件の設定及び変数のとり方を評価した。

奨励賞2 独立行政法人 産業技術総合研究所
デジタルヒューマン研究センター  主任研究員
(グループ名)  子どもの障害サーベイランスプロジェクト
<代表者>本村 陽一 (モトムラ ヨウイチ) 氏

業 績 モバイル分野におけるセンサ技術と人工知能技術における確率推論技術(ベイジアンネット)を融合した知識循環型の「子どもの事故予防」システムの提案

概 要 確率推論技術(ベイジアン・ネット)の手法を用いて子供の行動をモニタリング情報から危険を予測して、事故を予防するシステムを開発した。
人間行動についての情報収集の方法及びモデル化分析の新しい可能性を示した。
また、子供に限定された結果であるが、その成果を社会に還元できることを実証している点で評価した。

第5回(2006年) ドコモ・モバイル・サイエンス賞 受賞者 2006年10月20日


先端技術部門

優秀賞 横浜国立大学 大学院環境情報研究院 教授
松本 勉 (マツモト ツトム) 氏

業 績 ディペンダブルな生体認証技術を築くためのセキュリティ評価技術の研究

基礎科学部門

優秀賞 東北大学 電気通信研究所 教授
長 康雄(チョウ ヤスオ) 氏

業 績 次世代移動体通信用超高密度SNDM強誘電体プローブメモリに関する研究

社会科学部門

優秀賞 該当なし

奨励賞1 独立行政法人 情報通信研究機構 研究マネージャー
矢入 郁子 (ヤイリ イクコ) 氏

業 績 歩行空間のバリア・バリアフリー情報を提供するユニバーサルデザインデータ属性を持つ歩行者支援GISの開発と実用化

奨励賞2 グループ名  IIR モバイル・イノベーション研究プログラム
<代表者>武石 彰 (タケイシ アキラ) 氏
一橋大学 イノベーション研究センター 教授

業 績 モバイル・イノベーションに関する研究インフラ構築ならびに研究

第4回(2005年) ドコモ・モバイル・サイエンス賞 受賞者 2005年10月05日


先端技術部門

優秀賞 独立行政法人産業技術総合研究所 主任研究員
増井 俊之(マスイ トシユキ) 氏

業 績 モバイル環境における先進的ユーザインタフェース手法の研究開発

基礎科学部門

優秀賞 東京工業大学大学院助教授
山田 功(ヤマダ イサオ) 氏

業 績 不動点近似にもとづく信号処理方式に関する先駆的研究

社会科学部門

優秀賞 該当なし

第3回(2004年) ドコモ・モバイル・サイエンス賞 受賞者 2004年10月20日


先端技術部門

優秀賞 大阪大学教授
三瓶 政一(サンペイ セイイチ) 氏

業 績 インテリジェント無線伝送技術を応用したブロードバンドワイヤレス伝送技術に関する研究

基礎科学部門

優秀賞 名古屋工業大学助教授
王 建青(オウ ケンセイ) 氏

業 績 携帯端末の頭部に対するドシメトリ解析と安全性評価

社会科学部門

優秀賞 一橋大学イノベーション研究センター教授
Jeffrey L. Funk (ジェフリー・ファンク) 氏

業 績 携帯電話とモバイルインターネットにおける企業戦略と政府ポリシーに関する研究

第2回(2003年) ドコモ・モバイル・サイエンス賞 受賞者 2003年10月20日


先端技術部門

優秀賞 高知工科大学教授
清水 明宏 氏

業 績 モバイルコンピューティングにおける認証技術の研究・実用化

基礎科学部門

優秀賞 独立行政法人産業技術総合研究所研究員
中川 誠司 氏

業 績 骨導超音波知覚を利用した重度難聴者のための新型補聴器の開発に関する研究

社会科学部門

優秀賞 該当なし

第1回(2002年) ドコモ・モバイル・サイエンス賞 受賞者 2002年10月20日


先端技術部門

優秀賞 横浜国立大学教授
河野 隆二 氏

業 績 ワイヤレス情報通信分野における先進技術の継続的創生と産学官連携推進
(スペクトル拡散通信・ITS・アレーアンテナ・ソフトウエア無線・UWB無線技術)

基礎科学部門

優秀賞 東京都立大学助教授
田中 利幸 氏

業 績 統計力学にもとづくCDMAマルチユーザ検出方式の解析

社会科学部門

優秀賞 該当なし

奨励賞1 筑波大学助教授
新保 史生 氏

業 績 ネットワーク社会における移動通信を取り巻く法的諸問題の比較法的考察

奨励賞2 関西大学助教授 岡田 朋之 氏
佛教大学教授 富田 英典 氏
弘前大学講師 羽渕 一代 氏
武庫川女子大学助教授 藤本 憲一 氏
文教大学専任講師 松田 美佐 氏

業 績 ポケット・ベル以降の移動メディアの普及と社会変容に関する研究