2026年度 ドコモ市民活動助成(環境分野)の選考を終えてSubsidized List
2026年度 ドコモ市民活動助成(環境分野)の選考を終えて
選考委員長 一般財団法人自然環境研究センター 副理事長 渡辺 綱男
はじめに
ドコモ市民活動団体助成事業では、2023年度より、生物多様性が保全された豊かな自然を未来の子どもたちへ引き継ぐことを目的に、全国の市民団体による環境保全活動を支援しています。
今年度の公募と申請状況
今年度は、2026年2月17日から3月31日まで公募を行い、45団体から申請が寄せられました。申請件数は昨年度より14件増加し、内訳は「生物多様性の保全を推進する活動」が40団体(うち継続6団体)、「30by30目標達成に貢献する活動」が5団体です。全国各地から多様で意欲的なご提案をお寄せいただき、心より感謝申し上げます。
選考のプロセス
選考では、募集要項に掲げた「選考のポイント(5項目)」を基本に、活動の緊急性、妥当性、実現可能性なども含めて、事務局と選考委員がすべての申請内容を確認しました。そのうえで、各申請団体に書面によるヒアリングを行い、回答内容も踏まえて選考委員会で慎重に審議しました。
その結果、「生物多様性の保全を推進する活動」では11団体(うち継続3団体)、「30by30目標達成に貢献する活動」では2団体を採択しました。さらに、昨年度に「30by30目標達成に貢献する活動」(2年間)で採択した2団体を含め、今年度は計15団体に対し、総額17,850,000円を助成することとなりました。
今年度の応募傾向
活動テーマ1:生物多様性の保全を推進する活動
- 「環境学習活動」が19件と最も多く、次いで「自然環境保全活動」が10件、「絶滅危惧種等の保護活動」が5件、その他が4件でした。
- 地域別では、関東甲信越が最も多く(15件)、次いで関西・九州(各6件)、東海(3件)、北海道・東北・北陸・中国・四国(各2件)でした。
主な特徴
- 「環境学習活動」:里山・棚田、森林、河川、海域などを舞台に、手入れ不足や獣害、気候変動、震災復興など、各地域が抱える課題と向き合う体験型の環境学習に関する提案が多く寄せられました。子どもやユース世代を対象に、専門家と連携した生物調査やICTを活用した学習など、自然や生き物への理解を深める工夫も見られました。
- 「自然環境の保全活動」:放置林や被災地、海中・海洋などの環境の荒廃に対し、伝統工法、機械化、デジタル技術などを活用しながら課題解決をめざす提案がありました。企業、行政、地域団体など多様な主体と協働し、地域で継続的に自然を管理する仕組みづくりに取り組む活動も特徴的です。
- 「絶滅危惧種の保護活動」:絶滅危惧種や外来種の問題を対象に、ドローンやセンサーカメラなどを活用し、専門家と連携しながら科学的な調査結果を保全活動につなげる提案が多く示されました。
活動テーマ2:30by30目標達成に貢献する活動
- 「自然共生サイト認定をめざす活動」3件、「自然共生サイト認定後の活動のステップアップを目的とした活動」2件でした。
- 地域別では、東北・関東甲信越・東海・四国・九州が各1件でした。
主な特徴
対象地域は、蛇紋岩地、河川、都市近郊の緑地、里海・藻場、農業地域など多岐にわたりました。自然共生サイトの認定前後の段階に応じて、調査や保全活動を進める提案が寄せられています。現状把握のための生物調査や地域課題に応じた保全活動では、ドローンの活用、伝統工法、専門家との連携など、実践的な手法が示されました。また、環境学習や地域住民・若者の参画、産学官民連携を通じて、将来にわたる人材・資金・保全管理の持続可能な仕組みづくりに取り組む姿勢を重視しました。
今年度の選考を振り返って
今年度は、地域の生態系や生物多様性の現状を調査によって把握し、その知見を具体的な保全・回復の取組につなげようとする提案が多く寄せられました。活動テーマ1の採択団体のなかにも、将来的な自然共生サイトへの申請を見据え、行政や地権者との合意形成に向けて対話を進めている団体が多く含まれます。
また、昨年度の選考後の総評や本事業の記入手引きなどを参考に、生物や生態系の変化を効果的に把握するための指標種や、具体的で分かりやすい目標を設定する提案も増えています。日々の保全活動にとどまらず、活動による変化や成果を把握し、改善や幅広い情報発信につなげようとする意識の高まりがうかがえます。さらに、菌類に着目した生物調査など、新たな視点から生物多様性を捉えようとする提案もありました。
選考委員会における主な議論と今後への期待
選考委員会では、主に以下の点について、必要に応じて選考委員から各団体に助言を行いました。
高い評価を得た団体に共通していたのは、助成事業を通じてめざす成果が具体的に示されている点です。今後の申請や活動にあたっては、以下の観点を参考にしていただければ幸いです。
① 生物調査の結果を社会と共有する
生物調査は、活動地域に生息・生育する在来種や外来種等の状況を把握し、今後の管理の方向性を考えるための大切な取組です。
一方で、調査結果を記録として蓄積するだけでなく、地域の生物多様性の保全・回復を実際に前進させるために活用する視点が重要です。得られた調査結果を行政、専門機関、地域住民などと共有し、具体的な保全活動や環境管理へとつなげていくことが望まれます。
② 中長期的な展望を描く
環境保全活動を持続・発展させていくためには、単年度の活動だけでなく、中長期的な展望を描くことが大切です。ネイチャーポジティブの実現に向けた環境保全の取組には、地権者、行政、地域住民など、多様な関係者との協働が欠かせず、合意形成や協働体制の構築には、時間をかけた対話や関係づくり、そして多くの人の心に響く将来ビジョンの共有が必要です。
また、今年度は、担い手の育成を活動計画に明確に位置付ける提案も多く寄せられました。どのような技術を持つ人材を育て、地域の担い手としてつないでいくのか。さらに、生物調査や保全活動を通じて、どのような自然環境を未来へ残していくのかを見据えることが重要です。
そのためには、団体内でビジョン・ミッションや現在の立ち位置を改めて共有し、めざす姿とのギャップ(課題)や、その解決に向けた道筋について丁寧に議論することが大切です。こうした中長期的な視点を持って申請書を作成することで、助成期間終了後も活動が地域に根付き、持続可能な保全活動へと発展していくものと考えます。
むすびに
採択団体の皆さまには、地域の実情に即した環境保全活動を、多様な主体との連携のもとでさらに発展させ、柔軟な発想と挑戦する姿勢をもって取り組まれることを期待します。
惜しくも採択に至らなかった皆さまにおかれましても、本事業へご申請いただいたことに深く感謝申し上げます。今後の活動のさらなる充実と、来年度のご応募を心よりお待ちしております。
NPO法人モバイル・コミュニケーション・ファンド(MCF)事務局
